教室の紹介

”No job is finished until the paperwork is done.”
すなわち臨床、基礎を問わず行った仕事は必ず論文に仕上げて世界に発信する。

消化器・神経内科(旧第三内科)が開講したのは昭和57年4月のことです。平成15年10月には香川医科大学は香川大学との統合という新しい節目を迎え、 香川医科大学から香川大学医学部として新たにスタートしました。西岡幹夫初代教授、栗山茂樹第二代教授を経て平成20年からは第三代教授として母校出身の正木勉が教室を主催しており平成24年で開講三十周年を迎えました。

わたしたちの専門とする主な領域は消化器内科と神経内科です。消化器内科は腹痛、便通異常などを主訴とする多数の “common disease”を扱う極めて需要の多い診療科です。具体的な疾患としては日本の癌死亡の上位を占める胃癌、肝癌、大腸癌、膵癌などがあり、抗癌剤や分子標的治療薬による進行癌の治療や緩和医療の実践など消化器内科の重要性が年々増しています。加えて、早期の消化管癌(食道癌、胃癌、大腸癌など)や肝細胞癌に対する内視鏡的治療や経皮的局所治療などの進歩により従来は外科治療の守備範囲であった疾患が消化器内科医によりどんどん治療される時代になってきています。また日本に大変多いB型、C型慢性肝炎、肝硬変に対する治療は毎年の様に進歩し続けています。神経内科ではバイオサイエンスの医学への応用が進んだお蔭で多くの原因分子、遺伝子が特定される様になり治療への道が開けつつある多くの難病疾患をあつかいます。

このように広範な消化器・神経内科疾患をあつかう当科は、高齢化の進む日本の社会において今後ますます需要が増加することが予想される重要な臨床分野です。

当医局はこのような社会のニーズに応えるべく、開講以来、当該分野の臨床、医学研究ならびに地域医療の発展に励んで参りました。大学附属病院および関連医療機関において数多くの人材を育成し、県内の基幹病院へ派遣し、緊密な連携の中でチーム医療を行っています。

医学部と附属病院は丘陵地帯に位置し、丘の上から眺める讃岐平野の眺望は素晴らしいもので、特に早朝と夕暮れ時は思わず息を呑むほど美しく、日々の慌ただしさを一瞬忘れさせてくれます。交通の便も良く、高松市街までは車で30分足らず、またインターチェンジが大学のすぐ横にあり本四連絡橋、明石大橋にもダイレクトに接続しています。

香川大学医学部 消化器・神経内科学の強み

  1. 地方大学でありながら、リサーチマインドに根ざした遺伝子レベルで病態を診られる臨床医を育成している。
  2. 新しいデバイス、内視鏡手技の開発など、新奇性に富んだアイデアを臨床応用している。
  3. 県内基準病院に多数の同門会員が在籍し、密なネットワークで患者さんの重症度に応じて、迅速かつ適格に対応できる。

運営方針

教育

大学病院での臨床研修では、限られた研修期間内に効率的に指導するためにできるだけバランスよく多種類の疾患を担当できるように病棟医長が配慮しており、各症例毎に2人以上の指導医がつく体制をとり、研修医が必要な時に必要な情報、知識、技能がすぐに指導できるような体制を目指しています。
また一般内科医として必要な知識を習得させる一方で、せっかく当科を選択してくれた研修医に少しでも消化器・神経内科の面白さ、奥深さを味わってもらうために検査、治療には積極的に参加、可能な限り実践してもらっています。
関連教育病院においては当教室より複数名が常勤医として派遣されているため、研修医が安心して研修できる体制を構築しています。

臨床

消化器内科

当科では、消化器疾患、中でも肝疾患、消化管疾患、膵胆道疾患を対象とした診療を行っています。
私たちは、患者さん中心の温かい診療を行い、常に柔軟な対応と向上心を持って活気のある診療を目指しています。

※詳細は「診療案内:診療内容:消化器内科」をご覧ください。

内視鏡診療部

内視鏡検査は、近年、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の開発により、自然孔から病巣に到達し、電気メスや止血鉗子を用いた切開・剥離・止血といった体表に切開創のない低侵襲手術の様相を呈してきました。
特に消化器疾患領域での、診断・治療の発展・進歩は目覚ましく、非常に専門分化した診療体系をとっています。診断面では、通常消化管内視鏡に加え、高度な診断技術を要する拡大内視鏡検査、狭帯域光内視鏡検査(NBI)も内視鏡専門医により悪性腫瘍の局在、範囲診断などに導入されています。
食道静脈瘤治療や胆道・膵管治療はもとより、胆膵領域では、超音波内視鏡による診断・治療もおこなわれています。また早期食道癌、早期胃癌、早期大腸癌には、電気メスや止血鉗子を用いての高度な内視鏡手術である内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が積極的に行われています。従来では、困難であった食道全周性の大きな癌や、10cmを越える直腸癌・胃癌などにも、一括根治治癒切除を目的に全身麻酔下ESDを導入し積極的に行っています。診断のみではなく、消化器内視鏡分野は、当大学ではより大きな腫瘍に対する超低侵襲手術として盛んに行っています。近年、消化器外科と共同で、経管腔的内視鏡手術(NOTES)などの非常に高度で低侵襲手術もESDと平行して積極的に施行しています。

※詳細は「診療案内:診療内容:内視鏡診療部」をご覧ください。

脳神経内科

当科は、神経内科専門医6名、筋電図・脳波専門医2名、頭痛専門医1名、認知症専門医1名を擁し、神経内科分野のcommon diseaseからrare diseaseまで様々な疾患に対応可能な体制を整えています。近年では、欧米に多いとされた免疫疾患の症例数が全国的に増加しています。当科でも入院に占める免疫疾患の割合が多くなっており、その治療に積極的に取り組んでいます。また、2016年の病棟再編以降、脳外科との連携がよりスムーズになり、合理的なPET診断や脳生検などによって、これまで鑑別の難しかった脳内腫瘤病変の診断、治療が迅速に行えるようになっています。

※詳細は「診療案内:診療内容:脳神経内科」をご覧ください。

研究

肝臓グループ

研究面では主に大学院生や留学生による基礎的な研究と臨床スタッフによる臨床研究に分かれています。基礎的研究では以前から行っている各種悪性腫瘍における細胞周期関連タンパクのプロテインアレイやmicroRNAアレイを用いた網羅的な遺伝子発現解析を行っています。さらに同定したmicroRNAを高発現させたトランスジェニックマウス用いて、実際にin vivoレベルで疾患の表現型を変化させるかどうかについても研究を開始しています。またウイルス性肝炎患者に対し、抗ウイルス療法により、増減するmicroRNAを同定することで、効果予測マーカーの探索、および治療難治性のウイルス肝炎患者に対する新たな治療薬の開発のための研究を行っています。さらに最近は次世代シークエンサをいち早く導入し、各種消化器癌の病期ごとの全エクソンシークエンス解析を開始しています。今後は臨床に直結する研究、すなわちトランスレーショナルリサーチを目指していく方針です。臨床研究では香川県立中央病院や日赤との共同研究として行っているNASHに関する研究や岡崎生理学研究所および三菱化学との共同研究である新規腫瘍マーカーの開発などの研究、脈管浸潤を伴う高度進行肝癌に対する放射線治療併用の動注化学療法の検討、各種慢性肝疾患におけるファイブロスキャンを用いた非侵襲的肝繊維化の評価などが進行中です。

※詳細は「研究・業績:研究活動:肝臓グループ」をご覧ください。

消化管グループ

体表面に傷のない軟性内視鏡手術 (NOTES: Natural Orifice Transluminal Endoscopic Surgery)が全盛であった2009年から、Kagawa NOTES projectを組織的に設立し、知財・特許・工学部・微細工学センター・医学部が一同に会し、様々なデバイスの開発から商品化に進み、産学官・医工連携を展開してきました。これらの領域は、世界的にも内科・外科の枠にとらわれない新たな消化器病学として、開発から製品化まで競争し合いながら発展しつつあります。これらの潮流に遅れないように、個々が意識を持って研究した成果として、2012年APDW(Asia Pacific Digestive Week)、 2013年UEGW(United European Gastroenterology Week) にて国際学会賞を受賞しています。
当科の研究は、以下の3本柱で成り立っています。

  1. 現臨床レベルでの創意・工夫による新手技の開発
  2. 産学官・医工連携による次世代医療機器の開発
  3. 消化管癌の病態解明・バイオマーカー・創薬を目指した基礎研究

研究テーマの一覧を下記にに示す。これらは、すべて我々が常日頃、小会話の中で、培っている発想力・着眼点から生まれた斬新な研究であり、当科の特色の最たるものであります。

※詳細は「研究・業績:研究活動:消化管グループ」をご覧ください。

脳神経内科

神経疾患の診断、治療、病態解明に関する研究成果は、全人類の医療の発展に寄与すること。

  • 脳磁気刺激法を用いた神経機能回復訓練法の開発
  • ヒトの多感覚認知機能の解明と認知症診断法の開発
  • 神経変性疾患における自律神経障害の診断と治療
  • 神経変性疾患における遺伝子的及び病理学的研究
  • 神経変性疾患のマイクロRNA解析
  • 神経変性疾患におけるバイオマーカーの検討

※詳細は「研究・業績:研究活動:脳神経内科」をご覧ください。

香川大学医学部 消化器・神経内科学の目指す未来

当科では現在各グループが診療、研究成果を精力的にまとめ、国内外の学会、論文に多数発表しています。これは決して研究偏重主義ではなく、その努力が大学病院としての機能を外部から高く評価され、紹介患者の増加、研修医および新入医局員の増加、および施設の充実につながると考えます。

その先にこそ、新臨床研修医制度導入で低下した地方大学病院の医局の再活性化、地域住民への充実した医療提供の姿が見えてくると信じて全教室員が一丸となって努力しています。