内視鏡診療部

主な専門診療分野

  • 消化器内科:上部消化器内視鏡検査、下部消化器内視鏡検査、胆膵内視鏡検査、上部・下部消化器内視鏡・治療(EMR,EIS,EVL)・手術(ESD)、胆膵内視鏡治療(ERCP,EUS-FNA)
  • 消化器外科:上部消化器内視鏡検査、下部消化器内視鏡検査
  • 呼吸器内科:気管支鏡検査
  • 呼吸器外科:気管支鏡検査

診療内容・特徴

当部門は、平成30年10月に現在の2倍の面積310m2を有する新内視鏡室が完成し、最新の電子内視鏡システムを配備した検査室5室(透視付き1室含)に増床されました。県内外のあらゆる地域から早期消化管癌に対する内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection;以下 ESD)や胆膵内視鏡診療目的に数多くのご紹介を受け、高い内視鏡技術を提供しております。治療成績は、多数の治療経験のある内視鏡専門医が、最新の拡大特殊光スコープによる範囲診断をもとにESDを行い、その一括切除率は、全国のハイボリュームセンターと遜色ない良好な成績を残しています。特に2時間を越えると予測される治療困難な病変については安全性を重んじた全身麻酔下ESDを導入しています。更に、胃間葉系腫瘍に対し、内視鏡医と外科医の合同で胃内腔からESD手技にて最小限の局所切除を行う腹腔鏡・内視鏡合同胃局所切除(LECS)という低侵襲治療を先駆的に行っており、経験値が高い治療手技となっています。「心のこもった(思いやりのハート)確かな技術(卓越したアート)で、治す」をモットーに、良質・安全・高度な内視鏡医療を地域に提供するという大学病院としての使命を果たすことに努めています。

おなかを切らない内視鏡手術を御存じですか?

Q:早期食道癌や胃癌や大腸癌ってどうやってみつけるの?

A: 近年、軟性内視鏡(いわゆる胃カメラ・大腸カメラ)での診断に, 80-100倍まで拡大できる機能を搭載した拡大内視鏡や、特殊な光(NBI光)で診断する内視鏡が登場し、診断が一変しました。ポリープや腫瘍が見つかれば、その組織の一部をとって顕微鏡で診断してもらっていましたが、このNBI拡大内視鏡は、通常の光では見えない癌を特殊な光で発見しさらに拡大観察し、診断もその場で可能となりました(図1)。香川大学病院では、すべての内視鏡検査で、このNBI拡大内視鏡を採用していますので,以前に比べて生検やポリープ切除の必要がなくなりました。また、早期癌では症状がありませんので、内視鏡検査を受けていただかなくてはなりません。


図1:特殊な光(NBI光)を利用した拡大内視鏡で、図の黄色い線の左側は、蛇行・拡張・不均一な血管が濃く見られ、癌部です。黄色い線の右側は、そのような異常血管は見られません

Q:早期胃癌ってどれくらいの深さまでなの?

A:胃の壁は5層構造をしていますが、このうち、3層目までの浅いものは、内視鏡で切除できます(図2)。最近の研究で、この層までの癌は、リンパ節転移していないと分かったので、粘膜の中のみの癌から、粘膜下層の一部の癌まで内視鏡で完治することが可能になったのです。

図2:胃の壁は5層構造をしていますが、このうち、3層目までの癌は、内視鏡で切除できます

Q:内視鏡の治療・手術って、どんなの?

A: 軟性内視鏡(いわゆる胃カメラ・大腸カメラ)での治療・手術は,スネアで切り取る比較的簡単な内視鏡的粘膜切除術:EMRから、内視鏡的粘膜下層剥離術:ESDという電気メスで切開し、病巣を切除する、おなかを切らない治療・手術が開発されました(図3)。要求される技術は、高度であり、一般の病院ではあまり行われず、専門病院で行われています。ESDではどの部位のどの大きさの食道癌、胃癌、大腸癌でも切除が可能となり従来外科手術がなされていた早期癌もESDで完治されるようになってきています。患者さんの体にやさしい軟性内視鏡治療・手術です。

図3:3つの早期胃癌が胃の出口付近に見られます(左図)。ESDのいい点は、広い範囲の癌もひと塊で切除できることです(中央図)。ひと塊で切除することで、より正確な顕微鏡の検査が可能で(右図)、術後再発などはほぼなくなりました。

Q:具体的にどんな方法なの?

A:ESDの方法は、まず、切り取る癌の広がりを拡大内視鏡で詳しく印をつけます。内視鏡の鉗子口をとおるような、直径3mmくらいの電気メスで粘膜を切開し、内視鏡で見ながら粘膜下層まで深く入り込みます。いい点は、広い範囲の癌もひと塊で切除できる点です。ひと塊で切除することで、より正確な顕微鏡の検査が可能で、術後再発などはほぼなくなりました。大きな食道癌や10cmにも及ぶ胃癌、大腸癌も、麻酔科医の管理のもと全身麻酔をかけて切除できます。

Q:必ずESDでなおるの?

A:ESDで完全に切り取られた場合でも、ある一定の深さより深い癌と判った場合は、リンパ節転移の可能性ありますので、追加の外科切除が必要です。最近は、ESDで完治できるか否か、迷った場合は、まずESDで切除と診断を同時にしてしまって、ある一定の深さより浅い癌であれば、完治なります。深い癌であった場合は、従来の外科切除が必要です。ESDにより、患者さんの選択肢が1つ増えたことになります。

「Q&Aでわかる香川大学医学部附属病院の最新治療」より
香川大学医学部 消化器・神経内科 講師 小原 英幹

超音波内視鏡検査(EUS)ってどんな検査ですか?

Q:超音波内視鏡検査でどんな病気を検査するのですか?

A: 超音波内視鏡検査は内視鏡先端から超音波を出してその跳ね返りを画像として写し出す検査です。通常の健康診断などによく使われる腹部超音波検査では、胃や腸の空気、お腹の脂肪などが超音波を遮るため、細かな画像が写し出されないこともあります。しかし、超音波内視鏡検査は目的とする臓器のすぐ近くの胃や十二指腸から高い周波数の超音波を当てることで、非常に詳しい画像を写し出すことができます。
特に、お腹の深いところにある膵臓の病気(膵臓がん・慢性膵炎・膵嚢胞性病変・特殊な膵腫瘍や膵炎)や胆道(胆管がん・胆嚢がん・慢性胆嚢炎・胆石・胆管結石)などの病気についてCTやMRIよりも詳しい情報を得ることができます。ほかに胃や腸の粘膜の下にできる腫瘍や腹腔内のリンパ節や骨盤内の腫瘍などにも有効な検査です。(図1)
当院では2008(平成20)年に四国でいち早くこの検査を本格導入し、年間約300例の超音波内視鏡検査を行っています。


図1 膵臓と胆管の解剖と関連する病気

Q:超音波内視鏡って外来でできる検査ですか?また、体に負担のある検査ですか?

A: 当院では特別な症例以外は外来で検査しています。通常の上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)と比較すると内視鏡径も太く、検査時間も長いため、当院では患者さんが楽に検査を受けられるよう、適量の鎮静剤を使用しています。なお、鎮静剤を使用するため、自動車やバイクなどの運転はできません。

Q: 超音波内視鏡ガイド下穿刺吸引術(EUS-FNA)って、何ですか?

A: 超音波内視鏡では内視鏡の先端から針を出して、消化管を介してお腹の中のいろいろな臓器から組織を採取することが可能です。体外からの組織採取と比べて、最短距離で採取することができ、超音波でリアルタイムに病変を観察しながら穿刺することができるため、血管を避けることが容易で安全に組織を採取できます。処置に伴う偶発症(出血・感染・膵炎・がん細胞がばらまかれるなど)は1%未満とされており、腹腔内の病変、特に発見・診断が困難とされる膵臓の腫瘍で威力を発揮し、膵臓がんの早期発見に役立っています。(写真1)


写真1 超音波内視鏡による膵がん細胞の採取/安全に膵腫瘍の組織採取が可能です

当院では、これまでに250例を超えるEUS-FNAを行っており、膵臓がんや消化管の粘膜下腫瘍の診断に役立っています。

「Q&Aでわかる香川大学医学部附属病院の最新治療」より
香川大学医学部 消化器・神経内科 学内講師 鎌田 英紀

連絡先

087-898-5111(代)